国内の特許・商標・意匠、米国の知財に関する一口メモ

101条拒絶の範囲が拡大傾向

WEBサービス、ビジネスモデルなどソフトウェアの発明に関して101条によって拒絶される傾向が続いています。
ですが、その手の拒絶を予想していたものだけでなく、装置としてまとまっているようなものにも101条の拒絶が追加されることが多くなっています。現代の装置は、制御部を含むものが多いのですが、その制御内容に対して101条の内容が当てはまるというような指摘です。全体として装置の体をなしていてもお構いなしの雰囲気です。
もう少し具体的に説明すると、装置全体としては公知(大抵の場合、そういえばそうではあります)、特徴部分は制御内容にあり、それがabstract ideaに該当する場合、全体として101条で拒絶して良いという扱いです。
審査官としては、自分の保身を考えるわけで、微妙なものについては、出願人に十分に反論させて、ボスが十分に納得できそうな意見が出てこないのであれば、拒絶する方がよいと思っている節があります。インタビューでアドバイスされたような対応をしても、それでも克服しないというケースもあります。
いろいろ考えて対応しておりますが、十分な有効件数を言えないものの「XXデータ」とあるのを「XX信号」とするというような対応でも効果はありそうに思います。
私見としては、今は過渡期なのだと思います。

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米国特許出願のインタビュー

米国特許庁も、日本特許庁と同様に、インタビューの機会を得られるように、ビデオ会議を含めて改善を進めています。

当所もインタビューを行なっております。インタビューには、設定の時間、書類準備の時間、予めの対応の検討など、インタビュー用の事前の対応が必要ですから、当所では所定の費用をいただいております。

一方、審査官の審査方法が分かっていれば、敢えてインタビューする必要はないとも言えます。なので、当所の側からインタビューの実施を提案するということは多くはありません。

ただ、102条や103条はクリアしているのに、101条で頓挫している案件では、インタビューをして、審査官から補正のアドバイスを得たりしています。

その内容はというと、あまり納得するようなものではないこともあります。ですが、それくらいの補正なら受け入れられるというのであれば、受け入れることで特許になったりするものです。

また、そもそも審査官の意図を理解していない状態において、インタビューで説得しようとするのは無理があると思っています。審査官からは有効なインタビューとするために補正案や反論案を事前に提出することを勧められます。それを用意できない状態でのインタビューの実効性は低いと考えてよいと思います。

審査官の意図を理解したうえで、こういった方向性なら審査基準に基づいて拒絶理由を取り下げてくれるはずだと確信しつつ、審査官を必ずその方向に導かせるためにインタビューをして地ならしをしておく。そのような利用がよいと思っています。

当所以外のケースで審査が行き詰っているような場合、当所が内容を検討して対策を提案し、インタビューで確認して進めていくということもやっておりますので、ご相談ください。

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第三者提供:情報提供について(37CFR1.290):米国特許

第三者提供:情報提供について(37CFR1.290)
米国で誰かの発明の特許化を妨害する手段の一つとして第三者提供:情報提供の制度があります。

敢えて簡略に説明するならば、
1)特許許可よりも前、2)最初の公開から6ヶ月経過、あるいは、最初の拒絶の日よりも前であれば、
2)第三者は書面で
3)a)書類のリスト、b)各クレームとの関連の簡潔な説明、c)米国公報以外であれば書類のコピー、d)非英文文献であれば英文翻訳、e)IDS提出義務者ではないという主張を加えて
情報提供できるというものです。

オフィシャルフィーは、10文献ごとに180ドル(スモールエンティティ90ドル)です。

注意することがあるので、このメモランダムに残します。

1)簡潔な説明については、特許庁が適切な例と、不適切な例とを示しており、また、提出物は様式に沿っていないと見なされれば包袋に含められないので、適切な説明をしておく必要があります。無難にリストだけ付ければ良いというものではないですね。MPEP1134.01 II.CONTENT REQUIREMENTS FOR A THIRD-PARTY SUBMISSION B.Concise description of relevance

2)提出者は、匿名ではできない。本来の提出希望者でないといけないということはないのですが、架空のものであったり、空欄では提出できません。謝礼を払うということで、どなたかの名前で提出するのが良いと思います。

 

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クレームの数:米国特許

アメリカ出願は、一出願できるクレームのカテゴリーが狭いので、日本出願時のクレームを翻訳して出願すると多くのケースで限定要求が通知されています。
このため、当所は、米国出願時、予めカテゴリーを絞ってみてはいかがですかというように、クライアントにお知らせしています。
ただ、いろいろな事情が有りますから、限定要求を通知されることになることも多々あります。この場合、限定から外れたクレームをwithdrawnとして、cancelはしない対応をしておくことがあります。その理由は別の機会に。ただ、実務上、このwithdrawnの状態は、限定要求への対応として次の段階に進むものの、クレームの数としてはカウントされるようです。
そして、OAの対応で予備的に従属項を追加した場合、withdrawnのものを入れなければクレーム数が20以下なのだけれども、審査対象となっていないwithdrawnのものもクレーム数にカウントされると20を超えてしまうことが起きてしまいます。その結果、オフィシャルフィーを追加支払いしなければなりません。いったんは支払わないとだめだと思いますし、一旦支払うと、その後クレーム数を減らすなどした上で返金の手続きを取ったとしても、返金自体がなかなか進みません。何年もかかることも少なくないのです。
従って、この場合は、withdrawnのものをcancelしてしまうことで、追加後のクレーム数が20を超えないようにするということも考えた方が良いようです。withdrawnの対応は意味がないとは言わないものの、この期に及んではcancelで良いのではないでしょうか。

 

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特許調査について:特許権侵害の回避

特許調査というのは、目的によって、やり方や範囲が変わります。
(1)ある製品を作ったので、この製品を販売したいが、誰かの特許を侵害しないか調べたい。
(2)発明をしたから、特許が取れそうか調べたい。発明をしたのだが、すでに特許になっていないか調べたい。

(1)の調査はいくつか問題があります。それは、調査したいのは何かがはっきりしていないということです。
例えば、「コンピュータのマウスを作った。このマウスはエラーが発生したときに振動する」といった状況にあるとします。
もし、(2)なのであれば、「エラーが発生したときに振動する」マウスについて、特許調査すればよいということになります。こういった調査は比較的簡単に実施できます。
(1)の場合に、この調査をしてみたところ、既存の特許権には抵触しそうなものがなかったとします。それであれば、実施販売したいと判断してよいでしょうか。答えは、OKではありません。
確かに、「エラーが発生したときに振動する」という点では他の人の特許を侵害していないことは分かりましたが、その他の点で特許権を侵害しているか判断できていません。例えば、このマウスのマウスホイールはありきたりのものだと思って作っていたが、実はある会社が持っている特許権を侵害するものであったということがありえます。滑りやすくするための樹脂シートが特許製品であるかもしれません。マウス本体ではなく、ケーブルの先であるコネクタについても同様です。USBのコネクタに関しても、広く使って欲しいものの、その使い方についてはルールがあるでしょう。
また、マウスホイールについては特許権を侵害するものの、樹脂シートの部品については、特許権を持っている会社が製造販売している樹脂シートを使っているのであれば、特許権の侵害を気にする必要はありません。

本来は、完璧に特許調査をするために、マウスに関する特許権を一通り調査しなければなりません。それには莫大な費用が掛かります。

現実的には、その都度、完璧な特許調査をするのを諦めざるをえません。もちろん、企業として誠意をもって調査はしたといえることをすべきです。過失は仕方ないとしても、重過失を含めて故意は犯罪になります。過失であっても損害の賠償責任も生じます。

アプローチとしては、ある程度の目星は付ける。マウスについても、このあたりの構造は昔からの構造を踏襲しているし、部品として信頼のおける会社が製造販売している部品だと言えるのであれば、その構造については調査すべき項目から外します。
そういう観点で、まずはマウスの特徴や構造を箇条書きにしてみて、出尽くしたら、一つ一つを上の視点で確認していきます。そうすると、残った項目が特許調査をしておくべき項目と言えるのかと思います。
実際に調査する側では、そういった項目から調査に相応しい視点で分析してみて、どういったキーワードを使うかとか、どういった範囲に絞るかとか、調査方針を決めるということになると思います。

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2017年度の中国特許庁出願受理件数と授権件数の状況

中国の代理人から昨年度の中国特許庁の出願件数と権利化件数の連絡を受けました。
発明は年間で138万件出願されており、日本と比較になりません。多くは請求項1が複数頁にわたる分量になるそうで、ごみのようなものらしいです。ですが、その旺盛なことは脅威です。
日本でも過去には50万件を超えていた時期もありました。特許庁での審査の遅延の防止のために実用新案制度をあれこれいじくっていた時期があります。確かに、その時にも多くの些細な発明が出願はされていました。
そういった勢いがなくなった日本に未来があるとは思えないという声もよく耳にします。

2017年の中国特許庁出願受理件数と授権件数の状況(件数は万件))

出願件数

年度 : 発明 : 実用 : 意匠 : 合計
2017 : 138.2 : 168.7 : 62.9 : 369.8
2016 : 133.9 : 147.6 : 65.0 : 346.5
2015 : 110.2 : 112.8 : 56.9 : 279.9
増加率 : 3.2%: 14.4%: -3.2% : 6.7%
(2017/2016)

授権件数

年度 : 発明 : 実用 : 意匠 : 合計
2017 : 42.0 : 97.3 : 44.3 : 183.6
2016 : 40.4 : 90.3 : 44.6 : 175.3
2015 : 35.9 : 87.6 : 48.3 : 171.8
増加率 : 4.0% : 7.8% : -0.7% : 4.7%
(2017/2016)

※フォントずれしてしまうので、:を入れています。見えづらくて申し訳ありません。

 

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アメリカの費用について:米国特許

アメリカの代理人の費用はいろいろで、表面的にはどこが高い、安いという差が出るようですが、そういう差の実態は分かりづらいですよね。私どもでは日米と両方で事務所をやっていますのでアメリカでの実態というのは大体想像がつきます。アメリカにはアメリカの生活の背景があります。日本の仕事のやり方は通用しない理由があるのです。
例えば、中間応答費用が$1200の事務所、$2400の事務所。私が思うに、初心者レベルの実務者でも前者は4時間以上はかけませんし、かけられません。後者も同様で8時間かけるかもしれないけれども、8時間以上はかけません。それが実態です。
で、実際には、私どもが経験する範囲では、なかなか8時間では終えられないものです。$1200でやるところは、どなたか他の人が内容を検討して対策を進めているのであり、$2400でやるところは、そこそこは自身で対応するとしても、本当に必要な時間まではかけられないというところだと思います。
$2400くらいで、きちんと丁寧に仕事をし、直接の仕事になっていないことでも丁寧に相談に乗るということは到底無理です。当所も、アメリカでアメリカ人を雇用していましたが、この壁は越えられませんでした。当所は、こういったいきさつを経て今の状態になっています。オーバーワークは当たり前です。こんなことアメリカ人(アメリカに住んでいる人であって日本人でも同じです。仕方ないのです。)にはやってもらえません。

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特許庁費用は、出願人(規模)に応じて変化し、軽減措置があります。

大企業、中小企業、個人によって経済的な負担の大きさは異なりますから、米国特許庁でも条件を定めて、該当する出願人には出願費用や延長料金などの軽減措置を受けられます。

出願人の規模の分類として、3段階あります。
Large Entity(ラージ)
Small Entity(スモール)
Micro Entity(マイクロ)
です。以前は、ラージに対してスモールという1つの軽減措置でしたが、今はマイクロというさらなる軽減措置が加わっています。

条件を見て、スモールに該当するか、スモールに該当する場合にはさらにマイクロにも該当しないかを検討してください。

分からないことがあれば、ご質問ください。

--:出願人の規模:----------------------------

Small Entity適用条件(aとbとを両方満たすこと)
(a)譲受人が以下のいずれかに当てはまること。
・個人(Person)
・小規模企業(small business concern):関連会社を含めて従業員が500人以下の企業
・非営利団体(nonprofit organization):大学などの高等教育機関など
(b)当該発明にかかる権利について、small Entityに該当しない企業などに現在、譲渡又はライセンスしておらず、また、将来の譲渡又はライセンスに関する契約なども存在しないこと

Micro Entity適用条件
(1)SmallEntityに該当すること
(2)過去に米国で4件を超える出願をしてないこと
(3)発明者または出願人のいずれもが、前年の総所得(Gross Income)においてアメリカの年間平均世帯収入の3倍($155,817)を超えないこと
(4)前年の総所得(Gross Income)がアメリカの年間平均世帯収入の3倍($155,817)を超える収入のある団体へ譲渡やライセンスをしていないこと

 

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コンピューターソフトウェア関連発明の米国での取り扱い傾向について

コンピューターソフトウェア関連発明の米国での取り扱い傾向について

特許庁が公開している以下の資料が有用です。

IoT関連技術の審査基準等について(PDF:6,213KB)
http://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/iot_shinsa_161101/all.pdf

32ページに、以下の記述があります。

(参考)米国におけるCS関連発明の発明該当性判断の近況

米国裁判所の判決の傾向
2014年6月のAlice最高裁判決(*1)直後は、CS関連発明の発明該当性を否定する判決が相次いだが、その後は2ステップテストの適用の明確化が進み、発明該当性を認める判決が増加(*1)Alice Corp. v. CLS Bank International, 134 S. Ct. 2347

米国特許商標庁(USPTO)の審査の傾向
CS関連発明の発明該当性を否定する拒絶理由通知に対しては、技術的改善を目的とする発明は抽象的アイデアに該当せず発明該当性を有するとした2016年5月以降の判決(*2)や、USPTOの発明該当性に関する公表資料(*3)を引用・参照して反論を行うことにより、拒絶理由が解消しやすい傾向審査官との面接において、発明該当性が認められた判決と本願との類似点を主張することによっても、拒絶理由が解消しやすい傾向技術的改善とは関連しないビジネス方法については、依然として発明該当性が認められにくい

(*2) Enfish, LLC v. Microsoft Corp., 822 F.3d 1327 (Fed. Cir. 2016)や、McRO, Inc. v. Bandai Namco Games AM. Inc., 2016 U.S. App. LEXIS 16703 (Fed. Cir. 2016) など
(*3) https://www.uspto.gov/patent/laws-and-regulations/examination-policy/subject-matter-eligibility米国連邦地裁における発明該当性の判決の推移

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当所では、いまのところ技術的改善を目的とする発明は抽象的アイデアに該当するという指摘が来ています。
反論によって覆るケースもあれば、そうでないものもあるようです。

ビジネスモデルについては、あらかじめ米国出願する時点で加筆する必要性をご説明しています。加筆については当所でもお手伝いはさせていただいていますので、ご相談ください。

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